うつ病みの日々のあれこれ

うつ病みが日々のあれこれを綴ります

私大の公立化

滋賀県長浜市にある長浜バイオ大学が、浅見宣義長浜市長に大学の公立化などの提案書と改革案を提出したそうだ。話がスムーズに進展した場合は、長浜市立の大学となるだろう(あるいは滋賀県立かもしれないが)。市立の単科大学を運営するのに、長浜市の11万人強の人口規模(≒財政規模)は十分だと思う。

中小規模の公立大学は、志願倍率が高く受験生に人気がある。特に、地方の公立大は「地元」にこだわる受験生にとって絶好の選択肢だ。18歳人口が減少する中、定常的に優秀な学生を集められる公立化の波は今後も広がってゆくと思う。

公立化は、大学を運営することになる地元市にとって、財政上の負担を生むことになるが、それ以上に地元市立の大学があることは、対外的に「学園都市」の印象を与えるメリットが大きい。(ただし地元政治家からの悪影響が及ぶこともありうる。)

公立大学に人気が集まるのは、学費の安さが大きな要因である。中には地元出身者の入学金を半額に設定している公立大学もある。公立化によって学生や親の経済的負担が減ることで、それまで大学進学を諦めていた高校生にも進学機会が増えるのであれば、地域社会にとって利益が大きい。特に、地方では若者を地元に留めておく効果が期待できる。(むろん、卒業後どこに就職するかは当人の自由であるが。)

私立大の中でも、公立化まで踏み込んだ改革を考える大学は、その大学の将来を真摯に考えていると思う。規模の大小を問わず、一部の私立大学では理事会一族のワンマン経営で、将来像すら描けずにずるずると消滅の道を進みつつあるのもまた事実だ。高い授業料を学生から巻き上げて、その金額に見合う教育も施せず、ただ大学卒業の肩書を与えるだけの大学も、残念ながら存在する。

そのような私立大学の救済措置としての公立化は論外だが、この国には私立大学が乱立しすぎているので、自浄作用のある体制の私立大学は、公立化も含めて新陳代謝してゆければ良いと考える。

また、この国では大都市圏に大学が偏在しすぎているので、「大学進学≒大都市圏への移動」といった構図が想定されがちだが、それが続けば学生にとって経済的な苦境が続くことになる。極端な話では、進学のために大都市にやって来たはずが、実のところアルバイト労働に多くの時間を削がれて学業どころではないとの声もある。

大学生の年代は、様々な経験を通して一個人としての人格を完成させる時期である。経済的理由によりその大事な時間を労働に収奪されてしまうのは、社会全体の劣化だと思う。

大都市ばかりではなく、欧州のように、地方の中小都市にも客観的に高い水準の大学が存在していることは、その国の社会の豊かさを示す一つの指標ではないかと考える。

 

以上。2022.05.06