うつ病みの日々のあれこれ

うつ病みが日々のあれこれを綴ります

マスクを外して匂いを感じる

コロナ感染も嫌だけれど、こう暑くては熱中症の方が心配。1週間ほど前から一人で外を歩くときはマスクを外すようにした。

今まで気づかなかった夏草の青い匂いを感じた。蒸し暑さ、樹木が茂りセミがやかましく鳴く、でもそれよりもいっそう夏を感じた。匂いの感覚は脳の奥底に直接働きかけるようだ。

動物界では臭覚を通じて情報交換がなされる例が多い。犬のマーキングもアリが進む経路も匂いの化学物質による。そう考えると草の匂いで一気に夏を感じるのも、生き物が持つ根源的な感覚によるものだと思える。

私は人工的に付けられた臭いが極度に嫌いだ。「香害」を撲滅したい。付けている当人にとっては好ましい匂いかもしれないが、周囲の人がどう受け取るか考えてほしい。自分の好みの楽曲だからと大音響で鳴らしているのが周囲の人には迷惑であるのと同じことなのだ。

人工的に付けられた臭いは、嗅覚以外の感覚から得られて形作られた脳内の情報群をかく乱すると思っている。見た目や声から目の前の人物が50代男性だと認識されても、γ-デカラクトンやγ-ウンデカラクトン(ともに若い女性に特有)の匂いがしたらたちまち混乱をきたす。

自然にできた発酵臭は悪臭であってもできた経緯が想像できるので我慢できる。料理の強いニンニク臭も味を知っているので全然平気。だけれども着ている服の素材とはおよそ無関係な花の臭いがすれば脳内の情報群に混乱をきたして迷惑この上ない。

歴史上、特にインド洋を舞台に香料貿易が盛んにおこなわれた。食べ物の毒消しと信じられて海を渡った香料もあるが、入浴の習慣が途絶えた中世欧州で、不潔な体臭をごまかすために取り入れられた香料も多いだろう。またあるいは媚薬としての効用を期待したものもあったろう。

日本にも「香道」はある。だがそれは特定の空間の中で香りを楽しむものであって、自らの身に付けて周囲へ振りまくものではない。そして入浴の習慣が近世以降当たり前になっている日本では、不潔な体臭をごまかすための香料は必要なかった。

しかし海外(欧米やその植民地)では、先に述べた経緯に由来して、おしゃれの一環で香りを付けることが一般的だ。そんな調子で外国人旅行者が日本人の中に紛れると、「臭っ!」と顔をそむけられることもしばしばあるだろう。「おしゃれな匂いなのに、不本意な」と思うかもしれない。でも日本へ旅行で来るのは日本文化に触れたいからだろう。匂いを付けない日本人の習慣も理解してほしいものだ。

私は匂い全てを否定しているのではない。自然界に存在しその物体が備えている匂いはあって当たり前だと思っている。しかし、視覚や聴覚から得られた情報とかけ離れた臭いが周囲へと振りまかれるのに耐えられないのだ。

 

以上。2022.07.08