うつ病みの日々のあれこれ

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トルコ行進曲のどこがトルコか?

トルコ行進曲といえばモーツアルトとベートーベンの楽曲が有名だ。だが聴いてみると、この楽曲のどこがトルコなのか?と疑問に思う。

日本で伝統的トルコ音楽といえば軍楽隊(メフテル)の音楽が有名だ。だが現在演奏されている軍楽は、オスマン帝国で一旦衰退したものを、19世紀に西洋音楽の影響のもとで再興されたものであり、モーツアルトやベートーベンの時代の軍楽より民族音楽的要素が薄められている。

トルコ行進曲と称される楽曲、当時流行したトルコ趣味を織り込んだものかもしれないが、楽曲はあくまで西欧音楽そのものであり、近世に再興された軍楽からもかけ離れている。オスマン帝国軍に包囲されたウィーンの人たちが聞いた当時の軍楽は、さらに西洋音楽とは縁遠い物だったはず。

トルコ音楽では、全音を9等分した非常に細かい音程を巧みに使い分ける。だが、いわゆるトルコ行進曲にはそのような細かな音程は反映されていない。それを聴き分ける耳を当時の作曲家も持ち合わせていなかったようだ。

出来上がった楽曲は、トルコの名は付いても雰囲気だけがトルコ風であって、トルコ音楽の中身を理解し得ていない。当時の西洋人が異文化を取り入れようとしても、何となくそれっぽい物、という所で終わってしまった。

そのずっと後、ジャポニズムが流行った時期もあったが、オペラ「蝶々夫人」でも女性の描き方がステレオタイプなものであって、日本人から見れば違和感があった。

もっとも、現在に比べて人や物や情報の交流が非常に限られた条件下ではそれは仕方ない側面もある。

それよりも見方を変えて、当時の西洋人の世界観の狭さを知る手掛かりと考えれば良いかもしれない。

 

以上。2022.11.21